
今回はシマノの>12カルカッタ201のオーバーホールのやり方をご紹介します。
今までシマノのベイトリールをいろいろとオーバーホールした経験がありますが、実はカルカッタ系のリールを作業するのは初めてです。
さらに今回の「12カルカッタ」は「丸形リール。」
一般的な「ロープロ型」のベイトリールと違い、少し特殊な構造をしているので、戸惑う場面が多かったです…。
また、今回作業した個体はギアの青錆びやパーツの固着があり、洗浄にも苦労しました。
この記事では、12カルカッタのオーバーホールの分解と組立の工程を、49枚の写真と一緒にくわしく解説していきます。
ハンドルの取り外し
最初にハンドルを外すため、ハンドル固定ボルトを外します。
12カルカッタはハンドルをボディに近づけるために、スタードラグがハンドルの外側に配置される「Xドラグ」が採用されています。
12カルカッタ特有の構造ですね。
スタードラグの裏面には、音出しピンが2つあります。
失くさないように注意。
座金などのパーツの取り外しを完了。
12カルカッタは座金やシムの枚数が多い個体です。
順番が分かるように並べておくことをオススメします。
そしてハンドルを外します。
ハンドルにローラークラッチインナーチューブがネジで固定されていて、頑丈そうな構造です。
これで、ハンドル組の取り外しが完了しました。
ボディの開封
12カルカッタは変わった造りをしていて、サイドボディを取り外さないとスプールを抜けない構造になっています。
スプールを外すために、サイドボディを固定しているネジ2つとツマミ1つを外します。
(赤でマルをしたネジ)
しかし固着しているせいか、外せません。
初めて作業するリールなので、あまり無理したくないので、ここで外すことは断念。
よく考えたら、ハンドルが付いた状態の方が力を入れやすいから、ハンドルを外す前にスプールを抜けば良かったと後悔…。
初めてのリールなので、手順が悪いこともあります。
ハンドルを付けなおすのが面倒なので、青でマルをしたネジを外し、ギアボックスを開きます。
ギアの取り外し
グリスっ気がありません。
砂か塩の結晶のような粒もあり、悪い状態です。
ギアにも青錆びみたいなものがあり、状態が悪い。
まずはドライブギアとピニオンギアを外します。
12カルカッタはドラグや座金の枚数が多いです!
順番を忘れないように注意。
クラッチ系パーツの取り外し
ギアを外し、次はクラッチカムのパーツを外します。
バネを飛ばさないように注意です。
ギアとクラッチカムを外した後の本体の写真です。
12カルカッタはクラッチレバーのパーツも少し違うようです。
クラッチプレートを外したら、クラッチレバーガイドを固定しているEリングが見えます。
このEリングをマイナスドライバーで外します。
外し終わったクラッチ系のパーツです。
サイドプレートの取り外し
次はスプールのSVSブレーキ側のサイドプレートの取り外しです。
Eリングで固定されているので、これを外します。
溝の中なので、外しにくいです…。
必ず外さなければならないパーツではないですが、しっかり洗浄したいので。
ドライブギア軸の取り外し
ドライブギア軸を外す前に、固着している本体固定板を頑張って外します。
隙間にオイルなどを注したりして、なんとか外れました。
これでドライブギア軸を外せます。
他のシマノリールと違い、ドライブギア軸は本体固定板にEリングで固定されています。
大きいEリングなので、外すときに少し力が必要です。
また座金なども挟まれているので、位置関係を忘れないように注意。
ウォームシャフトギアの取り外し
最後の難関、ウォームシャフトギアです。
この個体のウォームシャフトギアは青錆びがあるので、取り外してキレイに磨きたいと思います。
抜け止め板で固定されているので、それのネジを外す。
また、レベルワインド受けも外します。
この個体には、小さい座金が2枚入っていました。
ウォームシャフトギアをずらすと、再びEリングが登場です
このEリングを外さないと抜けないので、頑張って外します。
力を入れにくいので、外すのに苦労しました。
これで、メインフレームのパーツの取り外しは完了です。
ベアリングやノブの取り外し
次は、メカニカルブレーキノブにあるベアリングを外します。
抜け止めバネの大きさが違うので、付け間違えに注意しましょう。
本体フレームにはまっているスプールシャフトのベアリングも取り外します。
メインフレームにはまっているので、剛性が高そうですね。
そして、ハンドルノブを取り外し、完了です。
プラスチックブッシュに砂が混じってました。
分解したパーツを洗浄!!
以上で、12カルカッタの分解作業が完了しました。初めて12カルカッタを分解した感想は、
- 座金のやプレートの枚数が多い
- Eリングが面倒くさい
- 構造が特殊
という感じで、なかなか面倒なリールでした。
青錆びのギアは洗剤とブラシでは落ちなかったので、歯磨粉も使用して、多少キレイにすることができました。
あまりゴシゴシ磨いてギアに負担はかけたくなかったのですが…。
パーツの洗浄に1時間以上かかってしまいました
乾燥したら、次はグリスアップと組立てです。
周辺パーツの組立て
リール中心部の組立ての前に、まずはハンドルやサイドボディ部分の組立てを行います。
手がグリスでベトベトになる前に組立てておきたいので、私は最初に行っています。
スプールの組立て
まずはスプールに洗浄したベアリングを付けます。
12カルカッタはスプールにベアリングが装備されているタイプなので、ベアリングリムーバーが必要になっています。
リムーバーを使う時は、スプールのフチを傷つけないように、セロテープで保護をしています。
なお、12カルカッタを組み上げる時に使ったオイルとグリスは、全てBOREDの製品です。
ハンドルの組立て
次はハンドルの組立てです。
12カルカッタのハンドルノブには、全てプラスチックブッシュが使われています。
そこで、ブッシュを全て4×7×2.5mmのベアリングに交換しました。
サイドボディの組立て
ハンドル側のサイドボディに、ベアリングとメカニカルブレーキノブを取り付けます。
また、メインフレーム内のスプールシャフトを支持するベアリングも取り付けて、周辺部の組立てはOK。
次から、いよいよメインの組立てです。
レベルワインドの組立て
まずはレベルワインドの組立てですが、構造が他のベイトリールと違います。
12カルカッタの方が面倒な作りです。
白いウォームシャフト受けの向きも間違えないように。
12カルカッタは向きに注意する必要があるパーツが多い。
ウォームシャフトギアをフレームにはめ込んだら、Eリングで固定します。
このEリングを付けるのに苦労しました。パーツがグラグラ揺れるので、力が入れにくい。
Eリングのサイズも大きいので、力を入れいなとはまらない。
固定できたらガイドの棒を入れ、押さえ板で固定。
そしてレベルワインドのキャップをしめて、レベルワインダーの取り付けは完了です。
キャップをはめる時に小さい座金の入れ忘れに注意です。
クラッチレバーの取り付け
次はクラッチレバーの取り付けです。
ここでもEリングがあります。
レバーやガイド棒、座金を取り付け、Eリングで固定。
ついでに、SVS側のサイドプレートも取り付け、Eリングで固定します。
小さいEリングなので、付けにくいです。
ドライブギア軸のの組立て
作業もそろそろ中盤、ドライブギア軸の取り付けです。
ギアや座金をはめ、本体固定板に取り付けます。
そして再び、Eリングで固定。
大きいEリングなので固いです。リングを飛ばさないように注意。
無事に本体固定板に取り付けたら、メインフレームにはめ込みます。
12カルカッタはスプールの脱着をする時、「ハンドル~サイドボディ・ギア~本体固定板」をまるごと抜く構造になっています。
オーバーホール前はこの黒い「本体固定板」がフレームに固着していたので、なかなか外すことができませんでした。
なのでフレームと固定板にグリスを塗り、固着しないようにしておきます。
クラッチカムの取り付け
次はクラッチカムの取付作業です。
クラッチプレートを固定板とガイド棒にはめ込みます。
その上にクラッチカムとバネ、クラッチツメをはめ込み、押さえ板をネジで固定。
クラッチバネを飛ばさないように注意です。
ドライブギア、ピニオンギアの取り付け
いよいよメインギアの取り付けです。
ギア、ドラグ座金を順番にはめ込むだけですが、12カルカッタは座金の枚数が多いです。
はめる順番や向きを間違えないように注意。
あとはピニオンギアとクラッチヨークを慎重にはめ、ギアの取り付けは完了です。
サイドボディとハンドルの取り付け
組立工程も終盤、サイドボディの取り付けです。
一つ注意点。
サイドボディを付けるとき、クラッチレバーを押し上げながらサイドボディを付けてください。
そうしないと、クラッチレバーを動かすことができません。
そのことを知らず、私は一度組立てミスをしてしまいました。
そしてローラークラッチインナーチューブを入れ、リテーナで固定。
ハンドルをはめ、ネジで固定します。
最後に座金やナット入れていきます。
ここでも座金やプレートの枚数が多いので、順番ミスに注意。
最後にスタードラグと固定ボルトを付けて、12カルカッタのオーバーホール作業は完了です。
12カルカッタのオーバーホール・まとめ
なんとか無事に12カルカッタのオーバーホールを終えることができましたが、構造が他のリールと違うため、困惑する場面がありました。
以下のものが、私が感じた注意点です。
- 座金、プレート、シムの枚数が多く、写真やメモをとらないと順番がわからなくなる。
- 大きいEリングで固定されている部分が多く、また場所的にも付け外ししにくい所がある。
とにかく、外した座金やプレートの順番は写真を撮ったりメモしておくことを強くオススメします。
そうしないと、順番がわからなくなる可能性が非常に高いです。
正直なところ、全分解をするならば、メタニウムなどのリールよりも面倒な構造でした。
しかし、剛性は非常に高そうです。
SVSブレーキ側のベアリングもメインフレーム内にあり、巻き剛性はかなりの物ではないでしょうか。
少し古いモデルになってきているので、安く入手することも可能。穴場のリールかもしれません。
まだまだ12カルカッタは活躍できるリールです!
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