
この記事では、シマノの「18アルデバランMGL 30HG」のオーバーホールの様子を詳しく解説していきます。
アルデバランMGLをオーバーホールする時に注意するポイントは、ネジの多さ!!
メタニウムなどの中型リールよりもネジの数が多く、しかも大きさや長さが似ています。
ネジの順番キチンと並べていなかったら、どのネジがどこの場所ものか分からなくなります。
そういう点では、アルデバランMGLのオーバーホールはちょっと難しめだと思います。
そんな複雑なアルデバランMGLの分解の工程を、63枚の写真を使ってくわしく解説していきます。
ハンドル・スタードラグの取り外し
最初の作業はハンドルの取り外しです。
まずハンドルナットを固定しているリテーナのネジを外します。
ネジとリテーナを外した後、ナットをレンチで外します。
この個体は右ハンドルなので、反時計回りに回すと緩みます。
そして、スタードラグや座金などを外していきましょう。
ハンドル部分のパーツは下の写真のとおりです。
16アルデバランBFSとアルデバランMGLは、他のリールと違って反っている座金の枚数が一枚少ないです(写真で一番右下)。
他のリールでは、反っている座金2枚を<>の形になるように合わせるのですが、18アルデバランは1枚だけです。
ついでに、スタードラグも分解しておきます。
これで、ハンドル部分のパーツの分解は完了しました。
ボディの開封
次はボディを固定しているネジを外し、ボディを開封します。
固定ネジは全部で5本もあります!
まずは1本目。
レベルワインドガードの下に2本目と3本目。
クラッチレバーの下に4本目と5本目があります。
それぞれ太さや長さが違うので、組立て時に、「このネジはどこのだったかなあ」と悩まないように注意する必要があります。
私は下の写真のように、位置がわかるようにテープで固定します。
特に頭が平たいネジはたくさん出てくるので、このように分かりやすく整理しておくことをオススメします。
また、ネジ穴を潰さないように注意して外してください。けっこう簡単に潰れます。
平たい頭のネジ穴をつぶしてしまうと、もう普通の方法では外せなくなってしまいます。
ネジを5本外すとサイドボディを外すことができます。
ドライブギアの取り外し
ボディを開封したら、次はドライブギアとピニオンギアを取り外します。
ドラグなどの順番は写真の通りです。
ギア類を外した後のボディ内部の様子。
ドライブギア軸の取り外し
次はドライブギア軸の取り外しです。
固定しているネジ2本を外します。
外してみると、ベアリングにはグリスがべったり…。
アルデバランMGLのドライブギア軸のベアリング等は、Eリングではなくてネジで固定されています。
このドライブギア軸のネジを外すときは、ネジ穴を潰さないように注意してください!
ネジにゆるみ止めが塗られているので、けっこう硬いです。
また、ネジを回す向きにも注意!
右ハンドルモデルの場合は、通常通り反時計回りに回せば緩みます。
しかし左ハンドルモデルの場合は、時計回りに回して緩む逆ネジになっているので、注意が必要です。
全てのパーツを分解すると、下の写真のようになります。
小さいピンやバネもあるので、うっかり失くさないように気をつけてください。
クラッチの取り外し
次はクラッチ系のパーツの取り外しですが、最近のアルデバランのクラッチは少し仕組みが特殊です。
クラッチカム押さえ板を固定しているネジは、裏面であるスプール側にあります。
この真ん中のネジ2本を外すと、押さえ板を外せます。
クラッチツメのバネの圧力があるので、パーツが吹っ飛ばないように押さえながら外してください。
次はクラッチツメの分解です。
アルデバランのクラッチツメは複数のパーツでできています。
ネジや座金があるので、失くさないように注意。
あとはプレートやクラッチレバーを取り外すと、クラッチ系のパーツの分解は完了です。
全て取り外すと、土台になっている本体Aシートを外せます。
これのネジも裏面のスプール側です。
このころには、ネジの頭が平たいネジが多くなっています。
サイズは似ていますが、どのネジがどの場所のものか分かるようになっていますか?
しっかり順番に並べながらの分解を強く推奨します。
ウォームシャフトギアの取り外し
まずレベルワインドガードを取り外します。
これはネジ1本で固定されているだけです。
カバーを外すと、ウォームシャフトギアが見えます。
まずは蓋であるレベルワインド受けを外します。
そしてウォームシャフトピンを抜き取ります。
このリールには、座金が2枚入っていました。
調整座金の枚数は、個体によって違います。
次はウォームシャフトギアを抜くため、Eリングを外します。
私はマイナスドライバーでEリング外しています。
このEリングの下には座金が2種類入っています。
うっかり失くさないように注意です。
2枚ある事に気づかず、組立て時に「この座金は何だ?」となることは、オーバーホールのあるあるです。
Eリングを外したので、ウォームシャフトギアを抜き取ります。
しかし分解図に乗っている2枚の座金がない…?
レベルワインドパイプの中に抜け落ちていました。
よくパイプの中に座金が残っている場合があるので、ここも注意です。
あとはレベルワインドやガイド棒を抜き取り、レベルワインド、ウォームシャフトギアの分解は完了です。
残ったベアリングやパーツの取り外し
主だったパーツの分解は完了しました。
あとは各部に残っているパーツやベアリングなどを取り外していきます。
まずはブレーキ側の本体カムレバーの取り外し。
正直なところ、このパーツは取り外す必要はありませんが、せっかくなので今回は分解しました。
次はメカニカルブレーキノブの分解です。
これもいちいち細かく分解する必要は無いと思いますが、私は古いオイルやグリスが残るのがイヤなので…。
ベアリングや座金を外し、分解完了。
次はSVSブレーキ側のベアリングを外します。
このベアリングには、サイレントチューンのゴム輪がベアリングに付いています。
だから結構抜き取りにくいので、ピックアップツールは必須になります。
そしてスプールシャフトのベアリングも、スプールベアリングリムーバーを使って外します。
こちらもサイレントチューン仕様のベアリングですね。
そして最後にハンドルノブのベアリングを取り外します。
これで、アルデバランMGLの全ての分解は完了しました!!
アルデバランMGLのオーバーホール・分解まとめ
アルデバランMGLを完全分解していきましたが、その構造は16アルデバランBFSと同じものでした。スプールやブレーキが違うだけかな、と私は感じました。
アルデバランMGLの分解のポイントを私なりにまとめてみます。
- たくさんあるネジの種類・位置を間違えないように並べて分解していく。
- ネジ頭のネジ穴を、なめて潰さないように注意する
一言でいえば、ネジに注意しよう、ということです。
最近のアルデバランは、パーツが多いというよりもネジが多い!
そして、そのネジはサイズも似ています。
上の写真では分解パーツを並べていますが、もしミスしてあれをひっくり返してしますと、どのネジがどの場所にあったものか、私はさっぱり分からなくなるでしょう。
面倒ですが、どこかに順番に並べるか番号を書き、テープで貼って動かないようにするのが無難だと思います。
そして、ネジ頭のネジ穴について。平たいネジをはじめ、細いネジが多いので、ネジ穴もつぶれやすいです。
平たいネジのネジ穴を潰すと、外せるのでしょうか…?
ドライブギア軸のネジも注意ポイント。
以前に16アルデバランBFSを分解した時は、私はネジ穴を潰してしまいました。
その時はネジザウルスを使う事で、なんとか外すことができました。
ネジに間違いがなければ、ちょっと構造は特殊ですが、オーバーホールに問題は無いと思います。
清掃・乾燥したら、次は組立て。次の記事では、アルデバランMGLの組立工程の様子を解説していきます。
ハンドルなど周辺パーツの組立て
メインの本体を組立てる前に、まずはサイドボディ、ハンドル、スプールを組立てておきます。
まずはスプールシャフトにベアリングをはめこみ、リムーバーでピンを固定します。
サイレントチューンのゴム輪は、端に近い方がスプール内部側でした。
次はサイドボディにベアリングを取り付けます。
サイレントチューン仕様のベアリングは、少しはめ込みにくくなっています。
最後にハンドルノブを組立てます。
ハンドルノブのベアリングには、私はボアードの粘度の高いオイルを使用しています。
今回使ったのは、ボアードの「ライトデューティー」です。
ボディ内部のベアリングにも、ライトデューティーを使用しました。
レベルワインドの組立て
さて、いよいよメインの組立てです。
ますはレベルワインド組からです。
最初にウォームシャフトギアを組立てます。
白いプラスチックブッシュをベアリングに交換しました。まあ、
あまり効果はないでしょうが、気分の問題です。
ギアをEリングで固定します。
私はマイナスドライバーで押し込んではめています。
2枚の座金も忘れずに。
ウォームシャフトギアの準備が出来たので、レベルワインドを組み上げます。
座金も多いですね。
私のリールでは、ウォームシャフトギアに2枚、ウォームシャフトピンに2枚、Eリングの手前に2枚の座金がありました。
レベルワインドにパイプとガイド棒をはめ込みます。
そしてパイプに組み上げたウォームシャフトギアを入れ、Eリングで固定します。
固定で来たら、ウォームシャフトピンと座金を入れます。
そしてレベルワインド受けでフタをします。
組み上げ後は手でレベルワインドを動かして、動きの途中で引っかかりがないかを確認します。
(以前にシマノの炎月をオーバーホールした時、レベルワインドが両端に移動した所で引っかかりがあり、調整に苦労した経験があります。)
問題なかったら、レベルワインドガードを付けて完了です。
クラッチ組の組立て
次はクラッチ組の組立てです。
最初に本体Aシートを取り付けます。ネジ穴は裏側のスプールにあります。
クラッチが稼働する部分なので、表面にグリスをしっかり塗っておきましょう。
そしてクラッチプレートとレバーを取り付けます。
次から、最近のアルデバラン特有のクラッチ構造です。
まず、クラッチカムにクラッチツメを取り付けます。
こんな場所にも小さい座金があるので、忘れないように注意です。
そして金具とネジで固定します。
この組立て式のクラッチツメの方が軽量なのでしょうか?
どうしてこんな仕組みにしたのか不思議です。
クラッチカムとバネをはめ込み、押さえ板をネジで固定します。
バネの圧力でパーツが吹っ飛ばないように気をつけてください。
ネジ穴が裏側にあるので、この作業がやりにくい…。
無事にネジで固定で来たら、クラッチ組の組立ては完了です。
パーツの可動域にはしっかりグリスを塗っておいてください。
ドライブギア軸の組立て
次はドライブギア軸の組立てです。
軽量リールであるアルデバランのドライブギア軸は軽いですね。
バスライズのドライブギア軸との重さの違いは、ちょっと持っただけで簡単にわかります。
まずは、軸にピン2つとバネを入れ、ギアをはめ込みます。
この白いギアは表面にヘコミがある面と無い面があるので、分解前と同じ向きになるようにしています。
一応、ギアの噛み合わせに影響があるかもしれないので…。
あとは固定板とベアリングを入れ、ネジで固定します。
そして2本のネジでボディに固定して、ドライブギア軸の組立て、取り付けは完了です。
ドライブギア・ピニオンギアの取り付け
さて、いよいよメインギアの取り付けです。
ストッパーギアとドラグ座金を取り付けます。
ストッパーギアは、角が曲面になっている方が上(ハンドル側)でした。
あとはドライブギアとピニオンギアをを取り付ければ、作業は完了です。
ボディを閉じ、ハンドルの取り付け
いよいよ作業も大詰め、サイドボディをネジで固定します。
まずはハンドル側に1本目。
裏側のレベルワインド下に2本目と3本目。
クラッチレバーの下とボディ下部に4本目と5本目。
ボディのネジ止めができたら、スタードラグ座金やナットを順番に取り付けていきます。
そしてハンドルを取り付けたら、アルデバランMGLのオーバーホールは完了です。
アルデバランMGLのオーバーホール・まとめ
オーバーホールを終えたアルデバランMGLのハンドルを回すと、巻き心地がとても軽くなっていました。
ドライブギア軸にべったりあったグリスを除去し、中粘度のオイルにしたことで軽くなったと思われます。
じつは作業時にギア比7.4のハイギアから、BFS・XGモデルのギア比8.0に交換したのですが、それでも作業前より巻き心地が軽快です。
そのうちBFSのエキサイティングドラグも取り付けようかなと考えています。
去年も今年も話題にあがることが少ないアルデバランMGLですが、幅広い軽量ルアーを楽にキャスティングできるので、私は非常に気に入っています。
このアルデバランMGLで良い釣りをしていきたいですね。
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