オーバーホールが完了したアンタレス5

この記事では、シマノの「アンタレス5」のオーバーホールの様子・やり方を、写真・図67枚をつかって詳しく解説します。

「アンタレス5」は「初代アンタレス」とギア比が違うだけで、基本的に同じ構造のモデルです。

ネット上では、初代アンタレスの分解は難しい」というような意見が多いですが、たしかにクセのある構造です。
分解の序盤にEリング外しがあり、これをできないと分解やギアのグリスアップはできません。

また、もうメーカーからのパーツ供給も無いモデルなので、パーツを無くさないように、慎重に作業を開始しましょう。

サイドプレートを外す

最初の作業で、SVSブレーキ側のサイドプレートを外します
このサイドプレートを最初に外す工程が、初代型アンタレスの特徴ですね。

まずは、スプールを抜き取ります。

サイドハッチを開けてスプールを抜く

そして最初にして難関の作業である、サイドプレートを保持している「Eリング」を外します

サイドボディを固定しているEリング

サイドプレートのシャフト軸に、「Eリング」「座金」「ゴム輪」「円柱の部品」があります。
Eリングを外すことで、これらのパーツとシャフト軸を抜くことができます。

私はEリングとシャフト軸の隙間にマイナスドライバーの角を入れ、回転させてテコの原理で押し出すように外しました。

分解したサイドボディの固定パーツ

この作業ができないと、初代型アンタレスのオーバーホールはできません。

ハンドルを取り外す

次はハンドルを取り外します。このハンドル部分も少し特徴があります。

まず、ハンドルの裏にあるネジを2本外します。

ハンドルを固定するネジ

ネジを外せば、ハンドルはカンタンに取れます。そしてナットプレートが見えます。

ハンドルのナットとプレート

レンチでナットを外し、プレートやスタードラグを外していきます。

ドラグの次にはバネ、ナット、座金、<>型の座金2枚、薄い座金、ベアリングがあります。

ハンドル部のバネ

パーツを順番に外し、並べておきましょう。
このあたりの構造は、最近のリールと同じです。

ハンドル部のパーツ

ハンドル部のパーツの順番は、上の写真の通りになります。
この個体は、ベアリングが少し錆びていますね。

サムレストやサイドボディを取り外す

次に、リール上部のサムレストレベルワインドガード、そしてハンドル側のサイドボディを分解します。

これらは合計7本のネジを外すことで分解できます。

アンタレス5のボディのネジの位置

上の写真で見えるネジが4本。そして、

レベルワインドの近くのネジ穴

ボディの穴から細いドライバーを差し、ネジ1本を外します。

各ネジの長さは、下の写真の通りです

アンタレス5のボディのネジ

長いネジと短いネジがあるので、位置が分かるようにしておきましょう。
私は位置が分かるように並べ、ネジが転がって移動しないようにテープで固定しています。

そして、レベルワインドの近くにネジが2本。

レベルワインドの上のネジ

最後の2本もドライバーで外します。

合計7本のネジを外すと、「サムレスト」「レベルワインドガード」「サイドボディ」の3つが簡単に外れます。

サムバーとレベルワインドのガード

ついでなので、サムレストとレベルワインドガードに付いている金色のプレートも外しました。

サムバーの金プレート

私的には、初代型アンタレスの特徴的な構造はここまでです。
後半の部分は、基本的な構造は最近のリールとだいたい同じです。

ドライブギア・ピニオンギアを取り外す

さて、いよいよ心臓部のギアとご対面です。
ドライブギアピニオンギアを取り外します。
これは抜き取るだけの簡単な作業です。

アンタレス5のボディ内部

グリスが泥のように黒くなっています…。

アンタレス5のドライブギアとピニオンギア

クラッチツメと噛み合うストッパーギアは、ドライブギア軸と一体になっています。

ドライブギア軸

ドライブギア軸を取り外す

次はドライブギア軸の取り外しです。ネジ2本で固定されているので、それを外します。

ネジを外せば簡単に抜けるのですが、この個体の軸はなかなか抜けません…。

ドライブギア軸のベアリングが錆びている

頑張って抜き取ると、写真のようにベアリングが錆びていました。
少し固着していたようです。

Eリングを外して分解します。

分解したドライブギア軸のパーツ

これで、ドライブギア軸の分解作業は完了。

クラッチカムを取り外す

次の作業はクラッチカムの取り外しです。
最近のベイトリールとは少し構造が違いますが、まだシンプルです。

クラッチカム

銀色の押さえ板とネジを2本外します。
その時、クラッチバネの圧力でパーツが吹っ飛ばないように注意します。

分解したクラッチカムのパーツ

クラッチプレートの構造が、最近のリールとは違います。
また、この部分のベアリングも錆びてゴリゴリでした。

クラッチレバーを取り外す

次はクラッチレバーを取り外します。
これはEリングで固定されているので、まずEリングを外します。

クラッチレバーのEリング

Eリング、座金、プレートを外しました。あとは、パイプを抜くとレバーが外れます。

クラッチレバーのパイプ

これでクラッチレバーの分解が完了しました。
いろんなパーツがEリングで固定されているので、全て分解するのはなかなか面倒なリールです。

分解したクラッチレバー

レベルワインド・ウォームシャフトギアを取り外す

分解作業もいよいよ大詰め。
レベルワインドウォームシャフトギアの取り外しです。

まずは、ウォームシャフトピンのフタをマイナスドライバーで外します。

レベルワインドのキャップ

ウォームシャフトピン座金を抜き取り、次はウォームシャフトギアを固定しているEリングを外します。
初代型アンタレスも、ウォームシャフトギアから水が浸入しないためのフタがあります。

ウォームシャフトギアのEリング

このEリングを外せば、レベルワインドやウォームシャフトギアのパーツをバラバラと外せます。
この部分のパーツは下の写真のとおりです。

分解したウォームシャフトギア

この時のアンタレスでは、ウォームシャフトギアを支えるパーツはベアリングだったんですね。
12アンタレスや16メタニウムMGLでも、今はプラスチックブッシュですし…。

この個体のベアリングのように錆びることが多いから、プラスチックブッシュに変わったのかもしれません

メインフレームにはガイド棒が1本残っていますが、外して清掃する必要は無いと思います。
せっかくなので、私は一応外しました。

ガイド棒

これで、メインフレーム部分のパーツの分解は完了です。

ハンドルノブの分解

ハンドルノブも分解して、ベアリングを清掃する必要があります。

そしてノブキャップを外すと、ナット型のネジ?があります。

ノブのネジ

縦溝があるので、マイナスドライバーで外すことができます。

分解したハンドルノブ

サイドボディのベアリングを取り外す

最近のベイトリールのメカニカルブレーキノブのベアリングは、分解せずに簡単に外せます。

しかし初代型アンタレスは、ボディの内側からしかベアリングを外せません

内側から外せないベアリング

面倒で交換されてなかったのか、この部分のベアリングのを回すとゴリゴリしていました。

また、SVSブレーキ側のベアリング。
これは簡単に外せるものですが、このアンタレスのベアリングは錆びて固着していました。

こういうところは、古い中古リールの怖い所ですね。

サイドボディのベアリング

とりあえず、これでアンタレス5の分解は完了しました。

分解したパーツの洗浄

全ての分解ができたので、次はパーツ洗浄です。

全て分解したアンタレス5のパーツ

このパーツ洗浄には1時間以上かかりました。
錆びや泥汚れなどがしつこくこびり付いていたので、一度の脱脂洗浄やブラシと洗剤での洗浄では、汚れを落としきれません。

古い機種なので、中古ショップに長年陳列されていたのか分かりませんが、なかなか大変な洗浄でした。

洗浄してキレイになったメインフレーム

オーバーホールせずに使用していたら、すぐに傷んでいたと思います。
古いリールを中古で購入された人は、最初にオーバーホールをするのをオススメします!

ハンドル、サイドボディの組立て

洗浄したパーツの乾燥が終われば、組立作業を開始します。

最初に私はハンドルサイドボディなどの周辺パーツを組み上げておきます。
手がグリスでベタベタになるまえに…

サイドボディのベアリングとハンドルの組立て完了

ちなみに、ハンドル側サイドボディにはめるメカニカルブレーキ部分のベアリングは、内側からしか入れることができません
これは初代アンタレスの難点です。

しっかり洗浄と注油をしておいてください。

レベルワインド・ウォームシャフトギアの組立て

メインフレームの組立てを開始します。
まずは、レベルワインドウォームシャフトギアです。

まずはガイド棒の両端をEリングで固定。

ボディにガイド棒をEリングで固定

レベルワインドとウォームシャフトギアのパーツを並べました。
パーツの種類はほぼ12アンタレスと同じです。

ウォームシャフトギアとレベルワインドの全パーツ

なお、組み立てる時に使うオイルとグリスは、全てBOREDの製品を使用しています。

まずはガイド棒にレベルワインドを通します。

ガイド棒にレベルワインドを通す

次に、ウォームシャフトギアとフタ、ベアリング、ギアを合体させます。

ウォームシャフトギアのパーツ

合体させたウォームシャフトギアとパイプをレベルワインドに通します。
フタの部分にパイプやガイド棒にはまるミゾや突起があるので、うまく当ててください

パイプとウォームシャフトギアをレベルワインドに通す

そして反対側もフタをはめて座金を入れ、Eリングで固定します。
フタの溝とパイプを上手くはまる位置があります。

ウォームシャフトギアをEリングで固定する

最後にウォームシャフトピンを入れてフタをしたら、ウォームシャフトギア・レベルワインドの組立ては完了です。

ウォームシャフトピンの取り付けが完了した

一応ギアを手で動かして、レベルワインドが左右移動する途中で引っかかりがないかを確認してください。

クラッチ組の組立て

まずはクラッチレバーの組立てです。

組立順に並べたクラッチレバーのパーツ

パーツの順番は上の写真のようになります。
各パーツを組立て、最後にEリングで固定します。グリスも忘れずに。

クラッチレバーをEリングで固定した

クラッチレバーーの固定が完了したら、次はクラッチカムの組立てです。

組立てる順番に並べたクラッチカムのパーツ

クラッチプレートの形状は古いですが、他のパーツは最近のものと同じです。

まずはプレートツメバネを写真のように配置します。

クラッチのプレートとスプリング

そしてクラッチカムを、ツメの突起やプレートの溝にうまくはめましょう。

あとは、バネの圧力でパーツが吹っ飛ばないように押さえながら、銀色の押さえ板をネジで固定します。

クラッチの取り付けが完了した

これでクラッチ組の組立ては完了です。

ドライブギア軸の組立て

次はドライブギア軸の組立てです。
ストッパーギアとドライブギア軸が一体化している以外は、最近のリールと構造の違いはありません。

ドライブギア軸のパーツ

上の写真の順番でパーツを組み上げます。薄い座金も忘れずに。
ベアリングのサイズは、最近のリールのベアリングより小さいサイズでした。

ドライブギア軸の組立てが完了

ベアリングをEリングで固定します。

そして、2本のネジでメインフレームに固定したら、ドライブギア軸の組立ては完了です。

ドライブギア軸を取り付けた

ドライブギア・ピニオンギアの取り付け

次はドライブギアピニオンギアの取り付けです。

ドライブギアとピニオンギア

ここも特に迷うような所はありません。
順番通りにドラグ板やギアをはめこんでいきます。

ギアの取り付けが完了した

ドロドロだったギアを新鮮なグリスでリフレッシュすると、非常に気持ちいいですね。

特殊構造のサイドボディ・サムレスト・ガードの取り付け

さて、そろそろ初代型アンタレスの組立ての難所です

初めに、サムレストやレベルワインドガードの金プレートを取り付けておきます。

サムレストやガードの金パーツ

まずは、サイドボディをメインフレームと合体させます。

サイドボディを取り付ける

そしてサイドボディをネジ2本で固定します。
今は仮止めなので、強く締めなくでOKです。

ボディのネジの位置はこの2つ。

サイドボディをネジ2本で固定する

次は私流の順番になってしまいますが、先にハンドル軸のナットを取り付けます。
下の写真のパーツです。

ハンドル軸の座金などのパーツ

理由は、クラッチのチューブが抜けるのを防ぐため

ドライブギア等の取り付けの時、ドラグ板の押さえの上にクラッチインナーチューブをはめました。
あれは溝にはまっているだけなので、ボディを傾けたりすると抜けてしまう場合があります。

色々なパーツのネジ止めをしようとすると、作業しやすいようにボディを傾けたりしますよね。
その時に抜けてしまったことがあるので、私は先にナット締めまで行います。

ローラークラッチのチューブが抜けないように、先にナットで固定する

次は、レベルワインドガードの取り付けです。
メインフレームにはめた後、細いドライバーを穴に通してネジ止めします。

レベルワインドガードをネジで固定する

次は天井のサムレストです。
はめこんだあと、まずは横からネジ止め。

ネジでの固定が完了

この時、仮止めだったサイドボディのネジもしっかり締めてください。

そして、レベルワインド側も2本のネジを締めます。

サムレストを固定する前方のネジ

これで横のサイドボディ、上のサムレスト、前のレベルワインドガードの取り付けが完了しました。

ブレーキ側サイドプーレートの取り付け

いよいよ難所であるサイドプレートの取り付けです

サイドプーレートと固定するパーツ

分解する時はカンタンでしたが、組立てるときはなかなか上手くいかず、手こずりました

まず、サイドプレートをメインフレームに通し、円柱パーツゴム座金をシャフトに通します。

シャフトに円柱パーツとゴム輪と座金を入れる

そしてシャフトをサイドボディの穴に入れ、シャフトにEリングをはめて固定できれば完了。
…なのですが、Eリングをはめるのに手こずりました

私が感じたこの部分のポイントは、下記の2つ!

サイドプレート取り付け注意点
  1. ゴムパーツをしっかり押し込む
  2. 2つの円柱パーツの向きが互い違いになるようにする

1番目のゴムパーツについては、ゴムをしっかり押し込まないとEリングをはめることができませんでした。

この部分のパーツを私なりに図にしてみました。

アンタレスのサイドプーレートをEリングで固定する時の説明図

SVS側サイドプレートのシャフトの根本から、ゴム→円柱パーツ→円柱パーツゴム→座金というパーツの順番になっています。

そしてシャフトにはミゾ(図で紫色)が掘られていて、そこにEリングをはめるようになっています

しかし普通にパーツを入れただけでは、ゴムと円柱のはまり方が甘いせいか、座金がミゾの位置に覆いかぶさった状態になっていました
ゴムをしっかり押し込んで組み上げても、座金がミゾの位置にあるためEリングをはめることができませんでした

そこで私はペンチを使って、上の図のように圧力をかけて根本の方に押し込みながら、ミゾにEリングをはめ込みました
ペンチで押し込まないと、ミゾが常に座金に隠れていたので…。

2番目の円柱パーツについては、向きに注意が必要です

円柱パーツは2つありますが、円柱の側面が片面だけ平になっています。
その平面が互い違いになるように組まなければなりません

サイドプレートをEリングで固定する

Eリング側の円柱パーツの曲面が、写真のように手前に来るように組んでください

この2つの試行錯誤で、この工程で時間を使ってしまいました。

スタードラグ・ハンドルの取り付け

さて、最後はスタードラグハンドルを付けるだけです。

スタードラグとハンドルパーツ

ナットはあらかじめ付けておいたので、バネとスプリングとプレートを付け、ナットで固定します。

スタードラグとプレートをナットで固定する

そしてハンドルを付け、2本のネジで固定します。

ハンドルをネジで固定する

これでアンタレス5のオーバーホールは完了です。

アンタレス5の組立工程のまとめ

難しいと言われている初代アンタレスのオーバーホール。
たしかに、最後のサイドプレートのEリングは苦労しました…

しかし、パーツ数が他より多いというわけではありません。
パーツ数だけでいえば、12アンタレスの方が多いです

「SVS側サイドプレートの付け外しが難しい事」と「Eリングの数が多い」という2点以外は、普通のリールとそんなに変わらないと感じました。

ドライブギアの所までいくまでの工程数が多いという点で、たしかにメンテナンスするには面倒くさいリールでありますが…。

思い切って一言でいえば、SVS側サイドプレートの付け外しさえできれば、オーバーホールはできると思います

オーバーホールが完了したアンタレス5

メンテナンスが面倒なリールですが、時々オーバーホールしないと、今回作業したリールのように内部では汚れや錆びが酷くなっているかもしれません

しかし汚れや錆びがあるリールでしたが、キチンと清掃・グリスアップをすると滑らかな巻き心地が復活しました。
スプール軸のベアリングを交換したことで、スプールの回転が間違いなく良くなりました。

しっかりメンテナンスすれば、初代アンタレスはまだまだ活躍してくれそうです!