
スコーピオンMGLと18バスライズには共通点があります。
それは、「ドライブギア軸の根元に”プラスチックブッシュ”が使われていること」です。
シマノの現行のバス用ベイトリールの中で、ドライブギア軸にプラスチックブッシュが使われているのは、最安モデルのバスライズと、なぜかスコーピオンMGLだけ。
「バスワンXT」や「SLX MGL」は、ドライブギア軸に”ベアリング”が使われています。
「アメリカのスコーピオン」と言える「クラドK」にも、ベアリングが使われています。
しかし、バスワンXTやSLXより価格が高いスコーピオンMGLにはプラスチックブッシュ…。
なぜ!?
アルミ製フレームで頑丈なリールであるスコーピオン。
負荷のかかるドライブギア軸には、プラスチックブッシュではなく、ベアリングを使用したい。
更に、スコーピオンMGLにはハンドルノブに2個、ウォームシャフトに1個のベアリングを追加できます。
合計4個追加することが可能です。
この記事では、シマノの中級機種ベイトリールの「19スコーピオンMGL」に「ベアリングを4個追加する方法」について、詳しく解説します。
ベアリングの追加作業に必要な物
スコーピオンMGLの4つのプラスチックブッシュをベアリングに交換する作業を行うために、必要な物をご紹介します。
必要なベアリングのサイズ
スコーピオンMGLに追加できるベアリング数は4つですが、サイズは2種類だけです。
- (内径)4mm×(外径)7mm×(高さ)2.5mm — 3個
- (内径)5mm×(外径)9mm×(高さ)3mm — 1個
以上のサイズのベアリングを使います。
メーカーに注文しても良いのですが、私は安くすませるために、下記のミネベア社製のベアリングを使用しました。1個200~300円ほどです。
- 「DDL-740ZZ NMB」 — 3個
- 「DDL-950ZZ NMB」 — 1個
作業に必要な工具
ベアリングの追加作業に使った工具は、以下の通りです。
- ドライバー(プラスはネジ、マイナスはEリング外し)
- レンチ – 10mmサイズ(ハンドルナット外し)
- ピンセット(細かいパーツをつかむ)
- ノブキャップリムーバー(ハンドルノブのキャプ外し)
あとは、「キッチンペーパー」を用意しておけば、分解したパーツを並べるときに役立つでしょう。
また、ついでにオーバーホールやギアの清掃・グリスアップをするならば、グリスやオイルとパーツクリーナーも準備しましょう。
私は、オイルとグリスはボアード社の「LDG」「DELTA」「GOLYAT」「LIGHT DUTY」を使用し、パーツクリーナーは呉工業の「プラスチックセーフ」を使用しました。
私がオーバーホール等で使う工具については、「リールのメンテが好きな私が選ぶ、オーバーホールに必須の工具」の記事にて詳しく解説しています。
スコーピオンMGLにベアリングを追加する手順
それでは、4つのベアリングを追加交換する作業手順を解説していきます。
場所は、「ハンドルノブ」「ドライブギア軸」「ウォームシャフト」です。
私はついでにオーバーホールをするために全分解しましたが、ベアリング交換に必要な作業だけを中心に書いていきます。
ハンドルにベアリングを2個追加する手順
内部のベアリング交換するためには、ハンドルを外す作業が必須。
そこで、まずハンドルノブにベアリングを追加する方法から紹介します。
スコーピオンMGLのハンドルノブには、1つのノブにベアリングとプラスチックブッシュが1個ずつ付いています。
そこで、ノブを分解してプラスチックブッシュをベアリングに交換して、2つのノブで合計2個のベアリングを追加します。
使用するベアリングは、(内径)4mm×(外径)7mm×(高さ)2.5mmのサイズ。
私はミネベア社の「DDL-740ZZ NMB」 を使用しました。
まずハンドルノブキャップリムーバーで、ノブのキャップを外します。
(写真ではハンドルを外していますが、この作業だけなら外す必要はありません。)
純正状態では、グリスが山盛りですね…。
ドライバーでネジを外し、ベアリング、座金、プラスチックブッシュを取り出します。
白いプラスチックブッシュをベアリングと交換して組み立てます。
一度パーツクリーナーで脱脂して、自分の好きなオイルなどで組み上げても良いでしょう。
ハンドルノブへのベアリング追加作業はこれで完了です。
ドライブギア軸にベアリングを1個追加する手順
次に、スコーピオンMGLを使うならやっておきたい、ドライブギア軸へのベアリング追加のやり方です。
使用するベアリングは、(内径)5mm×(外径)9mm×(高さ)3mmのサイズ。私はミネベア社の「DDL-950ZZ NMB」 を使用しました。
ボディ内部まで分解して、少し難しい「Eリング外し」の作業も必要なため、少し難易度が上がります。
ボディを開封するため、まずハンドルを外します。
ハンドルナットを固定しているリテーナを外し、レンチでナットを外します。
ハンドルを外すと、スタードラグやスプリング、ナット、座金も外せます。
順番や向きを忘れないように、並べておきましょう。
次に、サイドボディの「本体A」を固定して4本のネジを外し、ボディを開封します。
ネジの位置は、ボディ下に2か所、スプール裏に1か所、クラッチレバー裏に1か所です。
特にクラッチレバー裏の皿ネジは、ネジ穴を潰しやすいので注意しましょう。
4本のネジを外すと、サイドボディをフレームから外せます。
そしてフレームから、ドライブギアとピニオンギアを外します。
そして、ドライブギア軸を固定しているネジ2本を外します。
ドライブギア軸を外すと、青色のプラスチックブッシュが見えます。
ドライブギア軸に青いプラスチックブッシュが付いているのは、現行のバス用リールでは、最安値の「バスライズ」と「スコーピオンMGL」だけです。
Eリングと軸の隙間にマイナスドライバーの角を入れて回し、Eリングを外して分解します。
上の写真は全て分解しましたが、ベアリング交換するだけなら、青いプラスチックブッシュまでの分解でいいです。
青いプラスチックブッシュを、(内径)5mm×(外径)9mm×(高さ)3mmのサイズのベアリングと交換します。
(私はミネベア社の「DDL-950ZZ NMB」 を使用。)
Eリングをはめて組み上げたら、フレームにネジで固定して、作業完了です。
なお、ウォームシャフトにベアリングを追加するならば、フレームにドライブギア軸を取り付けずに、作業を続行します。
ウォームシャフトにベアリングを1個追加する手順
ウォームシャフトにベアリングを追加する場合は、上記の「ドライブギア軸にベアリングを追加」する手順まで分解を進めた上で、更に分解作業を進めます。
使用するベアリングは、(内径)4mm×(外径)7mm×(高さ)2.5mmのサイズ。
私はミネベア社の「DDL-740ZZ NMB」 を使用しました。
最短でプラスチックブッシュとベアリングを交換するだけなら、下の写真にある、黒いウォームシャフトギアのEリングを外してギアを外すだけで交換できます。
パーツの並びは下の写真のようになっています。Eリング・ウォームシャフトギア・プラスチックブッシュです。
白いプラスチックブッシュをピンセットで抜き取り、(内径)4mm×(外径)7mm×(高さ)2.5mmのベアリングと交換して、黒いウォームシャフトギアとEリングを付け直すのが最短作業です。
私はオーバーホールもしたかったため、写真ではウォームシャフトの全てのパーツが分解されています。
反対のサイドカップ側から、レベルワインドガードやEリングの固定も外せば、全て分解できます。
ウォームシャフトギアを外してプラスチックブッシュとベアリングを交換するだけでも良いし、私のように全て分解して交換しても、どちらでも良いです。
補足:清掃とグリスアップも同時にやろう
ベアリングの追加が完了すれば、後は分解作業の逆の順番で、組み立てなおすだけです。
その時、どうせなら清掃とグリスアップも同時にやっておきましょう。
全てのパーツのオーバーホールは面倒でも、ドライブギアとピニオンギアの清掃とグリスアップは、やっておくことをオススメします。
特にシマノのマイクロモジュールギアは、グリス切れしやすく、ゴリ感の原因になることもあります。
シマノ純正のグリスなら「DG04」を、メーカーは推奨しています。
なお、私はボアード社の「DELTA」を愛用しています。
好みのグリスで良いので、パーツクリーナーでキレイに洗浄したらグリスアップをして、組み立てます。
さいごに
以上、スコーピオンMGLにベアリングを4個追加する改造のやり方について解説しました。
それにしても、ドライブギア軸にプラスチックブッシュが使われていた事には驚きました。
旧モデルの14スコーピオンや09スコーピオンXTはもちろん、スコーピオンより安いSLX MGLや現行のバスワンXTでさえ、ドライブギア軸にベアリングが使われているのに…。
私見では、どうも下の価格のSLX MGLや上の価格のバンタムに人気で負けて、イマイチ評価がパッとしないスコーピオンMGLですが、私は大好きで愛用しています!
スコーピオンMGLにベアリングを追加してパワーアップさせ、タフネスリールのスコーピオンの本当の力を発揮させましょう。